プロストックラケットとは?購入方法と注意すべきこと

プロストックラケットは、プロ選手一人ひとりに合わせてカスタマイズして作られるラケットのこと。
プロ選手のラケットは最新の見た目(コスメ、ペイントなどと呼ばれる)のものを使用しているけど、中身は別物であることがほとんど。プロが新しいモデル出る度にラケット変更するわけにはいかないから当然。
超有名選手になるとその選手専用のパーソナルモデルとして一から作られることもあるけど、基本的にはラケットの厚さだけ決まっている基本のフレームがいくつかあって、その中から選んだものを選手一人ひとりに合わせてカスタマイズしていくことになる。
カスタマイズできるのは重量やバランスポイントはもちろん、ガットの縦横の本数やその間隔も変えられる。
ちなみに製造段階ではグリップの芯が長くなっており、そこから好きな長さに整えてカットするため通常はカスタマイズできないラケットの長さまで変更可能。
使用するプロ一人ひとりに合わせてカスタマイズされているため全てのプロストックラケットが使いやすいわけではないけど、どれも独特の打球感やフレームのしなりがあり明らかに市販のラケットとは別物。
プロストックラケットの購入方法
プロストックラケットはネットで検索すれば出てきますが、プロストックラケットを専門に扱っているサイトなどで購入できます。
例えばprostocktennis.comは海外のサイトですべて英語になりますが、有名なプロストックラケット専門サイトの一つ。
もしくは簡単なのがメルカリなどのフリマアプリで購入する方法。「プロストック」と検索するとたくさん出てきます。
ただし、中古のプロストックラケットを買う場合は本当に信用できるものかどうか見極める必要があります。
購入する際に注意すべきこと
ご存知の方も多いかもしれませんが、テニスラケットは中国製の精巧な偽物が数多く出回っています。使ってみればすぐに分かるほどおもちゃみたいな打球感だったりしますが、見た目はかなり細かい部分まで再現されていることも。こんな偽物ラケットがネットで簡単に安く買えてしまうため、それをちょっと加工して転売してる悪い人もいます。
さらにはせっかくの本物のプロストックなのに「重いからグリップ内のシリコンちょっと削った」とか素人が後から手を加えているケースもあります。
使いやすいとは限らない
仮に本物のプロストックラケットが手に入ったとしても使いやすいとは限りません。
プロストックラケットはそもそも“ある一人のプロ選手に合わせてカスタマイズ"されているものなので、万人受けするようなスペックではないことが多く、中にはかなり使いづらいと感じるカスタマイズをされているラケットもあります。
関連:憧れのフェデラーパーソナルラケット!!実際にコートで使ってみた感想
偽物と本物の見分け方
プロストックラケットが偽物か本物かどうかを判断する見分け方をいくつかご紹介します。以下、どれか一つが当てはまっていれば必ず本物というわけではないので、あくまで目安として総合的に判断してください。
- グリップ内部のシリコン
- ストリングパターン
- フレーム形状
- ペイント
- スペック
グリップ内部のシリコン
グリップエンドのキャップを開けてグリップ内部を確認してみてください。必ずではありませんが多くの場合シリコン注入によるバランス調整の形跡があります。
このシリコンは本物か偽物かが分かりやすいポイント。本物のプロストックラケットは半透明のシリコンがグリップ内部に綺麗に注入されているのに対し、偽物(もしくは素人によるシリコン注入)は色のついたシリコンが注入されていたりシリコン断面の仕上げが雑だったりします。
※まれに市販のラケットにシリコンが入っていることもあるので「シリコンが入ってるからプロストック」というわけではありません。
ストリングパターン
ストリングパターンによる違いも分かりやすいです。16×19のはずが18×20だったり、横糸が1本多かったり少なかったりする変則的なパターンもあります。また、同じストリングパターンでも目が荒かったり細かかったり間隔が違っていることも。
フレーム形状
本来ラウンド形状のはずのラケットがボックス形状になっていることが多いプロストック。もちろんラウンド形状のプロストックラケットもありますが、市販のモデルとフレーム形状が違うかどうかを見るのは分かりやすい判断基準の一つです。
ペイント
ツヤなしマット塗装のはずなのにツヤありグロス加工されていたり、逆にツヤありのはずがツヤなしだったり。またはスロート内部に記載されているはずのスペック表記がないなど、細かいペイントの違いも見ておきましょう(市販のモデルと完全に同じペイントになっていることも多い)。
スペック
スペック表記と実際に測った数値の違いを確認してみてください。フェイスサイズが明らかに表記されているものと違ったり、重さやバランスポイントが全然違うなどスペックの違いも重要。
プロストックラケットはプロ選手一人ひとりに合わせて調整できるよう最初は比較的軽めの状態になっています。そこからシリコンや重りで加重していくのですが、だいたいの場合はスペック表記よりも重めに仕上がっていることがほとんど。逆に軽いものもありますが、この場合バランスポイントがヘッドよりに調整されているなど、いずれにしてもスペック表記と実際の数値はかなり違うことが多いです。
※重量が軽過ぎる上にバランスもトップライトになっている場合は偽物のラケットである可能性があります。
市販ラケットとプロストックの違い
プロストックのラケットは市販のラケットとは全く違う別物。まず見た目から違うことが多く、フレームが本来ラウンド形状のはずなのにボックス形状になっていたり、マット塗装のはずがツヤありグロス加工されていたり。
あと打ってみればすぐに違いが分かりますが、明らかに市販のラケットにガットを張っただけの状態では味わえないような打球感やしなりがある場合が多く、初めて触ったときは感動するほど。
この上質な打球感については「プロストックはカーボン素材が高級品だから」と言われることもありますが、意外とカーボンの質は変わらずほとんど同じものが使われていたりします。実はラケットのしなり具合やボールの飛び、インパクト時の安定感などを高めるのは、カーボンの質の違いではなく精密に計算されたラケットの重量とバランスによるところがほとんど。
あのプロストックラケット特融の打球感やフレームのしなりは、そうして完璧にチューニングされた重量やバランスによって成り立っています。
プロがプロストックを使う理由
プロ選手がプロストックラケットを使う理由は、プロ選手だからこそ起こるスポンサー的な問題が関係しています。
ラケットを作っているメーカーもビジネスなので、利益を出すため頻繁に新しいモデルを発売します。ですがプロ選手は新製品発売の度にコロコロとラケットを変えるわけにはいきません。
そこでメーカーは、一般には流通させない「中身が変わらないラケット」を作り、選手一人ひとりに合わせてカスタマイズできるプロストックラケットを用意しました。こうすることで選手は同じラケットを使い続けられますし、ペイントジョブでコスメチェンジさえしてしまえば新しいモデルを使っているように見えるのでスポンサー的な問題にも対応できます。
ついにプロストックラケットが発売?
H19やH22といったウィルソンの有名なプロストックラケットですが、ついにウィルソンから公式に発売されることになりました。
H19は「ウルトラPRO」、H22は「ブレードPRO」としてすでに海外で発売されています。日本で買えるようになるかはまだ決まっておらず、発売されても高額になると言われています。
プロストックラケットは再現可能
プロストックラケットのような上質な打球感は、市販のラケットでも再現可能。
グリップ内部に仕込まれた重りやシリコン、ヘッドやフェイスに貼られた鉛テープなど、ラケット全体の重量とバランスを精密に調整することで、あのプロストックラケット独特のしなりや打球感は再現できます。
ただし、ラケットのチューニングは職人技。重さは0.1g単位、バランスポイントは0.1mm単位で精密に調整する必要があり、さらにスイングウェイトや実際に振ってみた体感バランスなども別途調整しなければいけません。
重量と静的なバランスポイントだけであれば簡単に調整できますが、動的なバランス、スイングウェイトや体感バランスの調整はかなり難しく、ラケットチューニングは経験やノウハウが必要。
例えば人気のフェデラー選手パーソナルスペックのラケット。
人気のフェデラーパーソナルラケット
実は僕はフェデラー選手が実際に使っていたラケットを使わせてもらったことがあります(詳しくはこちらでお話ししています)。
特に根強い人気があるフェデラー選手のラケット。RF97オートグラフは販売時点でフェデラー選手実使用ラケットにかなり近い状態になっています。しかし、購入してガットを張っただけではフェデラー選手が使っているものとはやはり全くの別物。
フェデラーパーソナルラケットを見せてくれる動画やスペックを解説しているサイトがたくさんありますが、どれを見ても市販のものより重量があり、バランスを調整する鉛テープが貼られていることが分かります。
本物のフェデラーパーソナルラケットを使ってみた感想
本物のフェデラーパーソナルラケットを使ってみた感想は、やはり僕がいつも使っている市販のRF97オートグラフとは別物でした。むしろ使ってみた瞬間、その違いに感動すら覚えるほどの質の高さ。
ラケットが柔らかくしなるのにインパクト時には面がどっしりと安定していて、いつも通りのスイングで威力も回転量もあるショットが打てるのに、かといってボールが飛び過ぎることもなくしっかりとコートに収まってくれます。タッチ系ショットも気持ちよくコントロールできる理想的なラケットでした。
使ったその瞬間からプレーの質が何段階も上がるような完璧なラケットなので、最初からこれを使って練習していればどれだけ上手くなれたんだろう?と今までのテニス人生を後悔してしまうような衝撃は今でも忘れられません。
カスタマイズに挑戦してみた
そんなラケットを一度使ってしまうともう市販のラケットで満足できるはずがありません。でもフェデラー選手の実使用ラケットは購入するとなると50~100万円はくだらないので現実的じゃないし…。
そこで僕は、市販のRF97オートグラフをなんとか自分でカスタマイズして、できるだけあの感覚に近づけられないかな?と試行錯誤しました。購入したRF97オートグラフは15本以上(変態)。
ここでは詳細は割愛しますが、市販のラケットは重量やバランスにかなり大きな個体差があるので、どの状態のラケットをどのように調整すればフェデラー選手のパーソナルラケットに近づくのかを本当にたくさん試しました。
そしてついに辿り着きました。初めてフェデラー選手の実使用ラケットを使わせてもらったあのときの感動をもう一度味わえるラケット。
今まで「あ、飛び過ぎたからもうちょっと回転かけなきゃ」「あれ、次はネットしちゃった」なんて繰り返してたのがウソみたいに、何も考えずに感覚的にスイングするだけで思い描いたボールがイメージ通りに飛んでいきます。市販のRF97オートグラフにはない独特のしなり、インパクト時の安定感。ドロップボレーが飛び過ぎて長くなることもなく、思った場所にストンと落ちてくれます。
フェデラーパーソナルラケットを完全再現するチューニング方法について詳しくはこちらでお話ししています。
道具が完璧ならミスの原因が全て自分にあると納得できる
かなり時間とお金(軽く数十万円は使いました…)がかかりましたが、一本で50~100万円以上するようなフェデラー選手のパーソナルラケットを買わなくても自分で精巧に再現できるようになり、普段のテニスも心の底から楽しくプレーできるようになったので今は満足しています。
もちろんミスはしますが、ラケットとガットが完璧な状態だと全てのミスの理由が自分にあると納得でき、すぐに次のプレーで改善できるんです。「今のミスはこうし過ぎたな、次はもう少しこうしてみよう」ですぐにボールが入るようになります。
ほとんどのミスは道具のせい?
市販のラケットでテニスをしているとよくあることですが、「思ったより飛んでアウトした」「思ったより短くなってネットにかかった」というミスはラケットやガットといった道具のせいである場合がかなり多いです。そんな状態でテニスをしていても上達は見込めません。なぜなら、
自分の中にあるイメージ通りにボールが飛んでいない→スイングや力の入れ具合で調整しようとする→どんどんおかしくなってしまう
という悪循環におちいってしまい、あれこれ意識しても改善できない原因不明のミスがずっと続くからです。
「道具のせいにせず自分で調節する人が本当に上手いんだよ」ということも一理あるかもしれませんが、道具に合わせて感覚を調整できる器用な人よりも、完璧に自分の感覚に合った道具を使って同じだけ練習した人の方が圧倒的に上達も早く伸びしろも大きいでしょう。
適当にテニスができるラケットがベスト
僕が今回辿り着いたRF97オートグラフのように、本来の性能を引き出した完璧な状態に整えられたラケットであれば適当にテニスができます。
チャンスボールを感覚的に適当に叩いてもイメージ通りにコートに刺さり、走らされて多少自分の体勢が崩れていても手だけで問題なくコントロールできるので、プロ選手の試合でよく見られるように“ピンチがチャンスになる"ことも増えます。「しっかり腰を落とさないと!」なんて考えず手を抜いてスイングしていてもいいプレーができる。それがテニスラケットの本来あるべき姿でしょう。
ですが、市販のラケットではそうはいきません。ラケットのスペックを見ると重量やバランスポイントが記載されていますが、同じラケットを複数本用意して実際に測ってみると全然違っていてかなり個体差が大きいんです。実際カタログにはちゃんと「平均バランスポイント315mm」のように表記されており、これはあくまで平均値なので実際に計測してみると305mmだったり325mmだったりするわけです。
ちなみにバランスポイントは「たった数mm変われば別物のラケットになる」くらい繊細な数値。そんなバラつきのある市販のラケットが打ちやすいはずありません。プロが使っているラケットだって一本ずつ細かいズレはあるのでそれを精密に調整して使っています。
市販のラケットをチューニングする
誰の手に渡ったか分からない中古の怪しいプロストックラケットを購入するよりも、市販のラケットをプロが使用しているレベルに精密にチューニングできるようになった方がいいのは間違いありません。
特に僕が使っているRF97オートグラフは元からフェデラー選手が使用しているパーソナルラケットにかなり近い状態に仕上げられているので、少し手を加えるだけでほぼ完全にフェデラーパーソナルラケットを再現できるのでおすすめ。
一からチューニングしようと思うと莫大なお金と時間がかかりますが、誰でも簡単に再現できるようにまとめたのでよければそちらもご覧ください。
フェデラーパーソナルラケットを完全再現するチューニング方法について詳しくはこちらでお話ししています。